子牛の育成セミナー パート1

明けましておめでとうございます

本年も『やれやれ獣医の留学日記』をご愛読の程 よろしくお願いいたします

 

さて、だいぶ前の話ですが、乳用子牛の育成セミナーに参加してきました。

早起きしたものの、家を出るのがいつものようにギリギリで、乗る予定のバスが目の前をブーンと通り過ぎてしまいまして・・・ちょっと遅れてしまいました、ははは。

 

このセミナーは農家さん向けのもので、午前中は子牛の育成全般に関して大学教員3名がプレゼンをおこない、午後は主にロボット哺乳について、外部の先生と地元の農家さん方がそれぞれ事例紹介という形で発表するもの。大学の大講義室で左右に大型スクリーンがあり、集まった参加者はたぶん200人以上。

事前に農家さんから質問があった内容に沿って進めていく形式で、その中からいくつか覚えている点をピックアップしていきます。

 

・初乳

「えー、初乳の大切さはもうわかってるよ・・・」と心の中でつぶやいたyareyareですが、「初乳は1回だけ飲ませるのではなく、2-4回搾乳した移行期乳でも十分に価値がある」とのこと。

「まだまだインスリン値やIGF-1値が高く、移行期乳を引き続き子牛に飲ませると、その後の腸絨毛の発育が良くなることがわかりました」だそうです。ふーん。

別件ですが、新生子牛に代用乳のみ(グループ1)と代用乳+初乳製剤(グループ2)を生後1-14日まで飲ませ、生後56日目までの臨床症状や治療回数を比較した論文を読みました。実験開始前、子牛全頭に初乳を4l飲ませ、血中IgG値が10g/l以上であることは確認済み。下痢、カゼ、臍帯炎のスコアを比較したときに、グループ1のほうがより重症である確率が高く、抗生剤での治療率もグループ2が18.8%であったのに対し、グループ1は76.5%と高かったようです。*1

病原体の有無や、著者が初乳製剤を作る会社に所属していること、はたまた経済的かどうかなど疑問点はありますが、生後時間が経っても引き続き初乳や移行期乳を飲ませることは子牛の健康に効果を与える模様です。

 

・哺乳量

「『一度にたくさんのミルクを飲んでも大丈夫なのか?』という質問を受けますが、こちらをご覧ください」と、子牛の4胃のX線画像が示され

「1回5リットル以上飲むことは生理的に可能です。飲む量が多くなると、その分小腸へ流れる速度がゆっくりになるのです。ルーメンへの逆流はみられませんでした。」

ふむふむ。

 

・離乳

「『哺乳量を増やすと離乳後の食いつきが悪い気がする』と聞きますが、結論から言うと、多く飲ませていても最終的にスターターの摂取量に差はありませんでした」とのこと。

そして「離乳は最低2週間かけておこなうことと、従来は離乳時にスターターを1kg喰っていることを目安としていましたが、最近は2.5kgとかでもいいかもしれませんね」とのコメント。

さらには「離乳後の子牛については、まだわかっていないことも多く、研究の余地がある分野」だそうです。

 

長くなったので続きは次回で

*1:Chamorro, M. F., Cernicchiaro, N., & Haines, D. M. (2017). Evaluation of the effects of colostrum replacer supplementation of the milk replacer ration on the occurrence of disease, antibiotic therapy, and performance of pre-weaned dairy calves. Journal of dairy science, 100(2), 1378-1387.