獣医クリニックで実習 パート2

手術は獣医がしますが、その他の治療は農家に任せることもよくあるので、「それぞれの農家がどういう状況にあるのか、把握するのが難しくない?一体どうやって管理しているの?」と訊ねてみました。そうしたら、

「まず、農家と獣医は1対1で対応する。1件の農家に1人の獣医の担当制。担当獣医が休みの時は違う獣医が行くこともあるけど。」

「抗生剤の処方・使用に関しては国レベルの厳しい基準がある。農家当たりの抗生剤の使用量が多すぎると、農家にも、処方した獣医にも、ペナルティが加算される仕組み。赤、黄、緑の三段階評価になっていて、赤になると、農家は集乳してもらえなくなり、獣医は農家から依頼されなくなる、などの重い処罰が下されるのよ。だから、どちらも慎重になる。クリニック内でも、抗生剤担当の獣医を1人指定して、その人がクリニック全体で取り扱っている抗生剤に関して一元管理している。大変だけど、この方法を用いて2009年から抗生剤使用低減の活動を始め、今では使用量が以前よりも70%*1低下したのよ。」

と答えてくれました。

そのほか、疾病撲滅・予防に関連する業務もあり、例えば各農家に合わせたマニュアルがそれぞれ作られていて、第一選択薬、乳房炎や子牛の下痢の頭数、IBRやBVDフリーかどうか等の情報が前年、今年、来年の目標値と3カ年分入力されていました。それを元に「今年の乳房炎は何頭、子牛の下痢は何頭だったので、去年と比べてこういう結果になりました。来年の目標値はこう設定しましょう。」などと獣医が農家と話し合っていました。

全体的な感想としては、オランダでは個体の治療よりも、将来大きな問題となるであろう抗生剤の使用や疾病予防に力を注いでいて、それを国全体が一丸となって取り組んでいるように感じました。もちろん、日本とオランダとでは、国土面積、産業分野としての農畜産業の位置づけ、農畜産物の輸出国か輸入国かどうか、などいろいろ異なるので、単純に比較することはできないと思います。「オランダは輸出国ということもあって、基準を厳しくしているのよ。他国からの信用が得られないと問題になるから。」という言葉も聞きました。国土面積が狭い分、堆肥の管理や環境中への窒素やリンの排泄など、解決すべき問題もまだまだあります。

ただ彼らは、オランダという国が持つそれらの特徴を全部ひっくるめて受け止め、あれこれ吟味して、うまく活用しているように思いました。

以上、久しぶりの現場が楽しくて、つい小躍りしたyareyareがお伝えしました。

*1:鶏の場合